「空爆論」と「世界の新しい対立軸」

 

1.空爆論

石川五右衛門の「浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」の台詞ではないが、「世に戦争の種は尽きまじ」である。非常に悲しいことであり、憤怒の極みであるが、戦争の種は尽きることがない。なぜなら、戦争を望み、それを誘導している人たちがいるからだ。その人たちは戦争で大儲けして、「戦争は儲かるビジネス」と考えている。庶民の命など家畜同然だと考え、自分たちにとって役に立てば生かし、役に立たなければ殺すだけの存在なのだ。そしてその人たちが世界中で、権力と財力を独占している。

 

IS(イスラム国)を生み出したのはアメリカのイラク戦争である。ISの人質斬首や焼き殺し、自爆テロの残虐性は嫌というほど喧伝される。では空爆(空襲)は残虐ではないのか?空爆は爆撃機が撃墜されない限り、自国の兵士が死ぬことはないので、非難されにくい、卑怯な戦術である。

広島、長崎の原爆、東京大空襲、各都市の空襲(空爆)を経験している日本人にはその悲惨さがわかるはずだ。いかに「大日本帝国の戦争指導者」が「悪の枢軸」であろうと、焼き殺されるのは何万何十万人という単位の一般庶民だ。原爆投下は町がどのように破壊されるか、人体にどのような影響が出るかの壮大な人体実験であった。原爆投下前までの広島はほとんど空襲を受けず、きれいな街並みが残っていた。つまり原爆投下のために温存されていたのだ。広島長崎の原爆投下後、アメリカのABCCという原爆傷病調査団が入ったが、一人の命も救おうとせず、ただどのような現象が人体に起こったかを観察し、膨大な資料を持ち帰った。東京大空襲は周到に計画された。紙と木と土でできている日本家屋をアリゾナの砂漠に再現して、焼き尽くすための実験を繰り返し、日本向け焼夷弾(ナパーム弾)を開発した。バケツリレーで消火に当たれば、水の上を火が付いた油が走り、消化どころかますます延焼してしまう。隅田川と荒川で囲まれた一帯が火の海になれば人々は逃げ場を失い、川に飛び込んで死ぬのだ。なぜ3月10日であったか?この時期東京には猛烈な季節風が吹くのである。江戸の街の大火はこの時期の集中している。大空襲にあった下町には老人、女性、子供しか残っていなかったのである。すべてが計算され尽くされた残虐極まりない「無差別大量虐殺」であり、「戦争犯罪」であった。これらの空襲を計画、指揮したのはアメリカ軍のカーチス・ルメイという司令官であった。戦後日本政府はこのカーチス・ルメイに勲一等を授与している。航空自衛隊の創設育成に貢献したという理由で。自国民を何十万人も殺した人間に対してである。安倍晋三の大叔父佐藤栄作が首相の時代であった。

イスラム諸国への空爆(空襲)で親や子や家族を殺された人々が絶望の淵に落とされ、復讐心からテロに走ってしまうことは容易に想像がつく。戦争は恨みしか残さない。つまりテロを拡散しているのだ。と同時に大量の武器と、大量の汚い「マネー」を消費する「巨大ビジネス」でもあるのだ。

 

2.世界の新しい対立軸

 

 冷戦時代の「資本主義」対「共産主義」、「右翼」対「左翼」、「保守」対「革新」、などという対立軸はもはや古いのではないか。世界の対立軸は次のように変化しているのではないか。

アメリカ大統領選におけるトランプ現象は行き過ぎたグローバリズム、新自由主義に対する疲弊と反動である。グローバリズムは格差を拡大するばかりで、人々を幸福にしないことが分かった。同時に国民国家、民族としてのアイデンティティが失われていくことへの危機感が底流にあると言える。欧州における、イギリスEU離脱問題、極右勢力の台頭も、同様に行き過ぎたグローバリズムに対するアンチテーゼではないかと思われる。ただこれらの問題点は、極端な反知性主義、差別主義、排外主義に陥っている点である。反グローバリズムが極右勢力に結びついていることは非常に危険な兆候である。しかし今までの病巣を噴出させるという反面教師的な面はあるだろう。

 

反グローバリズム

ローカリズム

VS

グローバリズム

共生社会

VS

弱肉強食社会

地域、国、民族ごとの伝統文化、

風俗習慣、歴史、宗教を重んじた

政治経済社会システム、

共存共栄世界

  

VS

新自由主義

市場原理主義(世界単一市場)

グローバル金融資本主義

軍需産業、軍産複合体の解体と

平和的産業の確立(ハト派)

VS

戦争経済(タカ派)

知性主義 真実を直視し、歴史の教訓を生かし、先人の残した学識、知恵を現代に生かす

VS

反知性主義 post-truth

歴史修正主義

自分の都合のいいように真実、

歴史を捻じ曲げて解釈する

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.この対立軸を日本の状況を踏まえて書き換えると次のようになる。

 

反グローバリズム

VS

グローバリズム

対米自立 自主独立

日本の文化伝統の重視

日本アイデンティティの確立

VS

対米隷属、対米従属

対米ポチ(飼い犬)路線

 

規律ある自由貿易(反TPP

VS

野放図な自由貿易(TPP

日本社会の破壊

グローバル資本へ日本の富を貢ぐ

食料自給率上昇

VS

自由貿易による日本農業の破壊

アメリカの農業に利する

反原発、自然エネルギー推進

VS

原発推進

立憲主義、法治主義

VS

アベ政権の暴走を許容

反安保法制

 

VS

安保法制により、自衛隊がアメリカ軍の下請け軍隊、傭兵となり、

国民の生命をもアメリカに貢ぐ

反特定秘密保護法

反共謀罪

Vs

情報隠蔽社会、記録、歴史の改ざん

監視社会、密告奨励社会

格差是正社会(共生社会)

VS

超格差社会(弱肉強食社会)

正規雇用の拡大

VS

非正規雇用の拡大

普天間の辺野古移設反対

VS

普天間の辺野古移設推進

新基地を作ってアメリカに貢ぐ

知性主義 真実を直視し、歴史の教訓を生かし、先人の残した学識、知恵を現代に生かす

VS

反知性主義 post-truth

歴史修正主義

自分の都合のいいように真実、歴史を捻じ曲げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もはやアベシンゾーやアベ政権について論評するのもうんざりするが、最高権力である以上、基本を押さえる必要があり、この政権を葬り去るまで批判し続けなければならない。

アベ政権の経済政策上の立ち位置はトランプ現象などの欧米の潮流と異なり、グローバリズムにくみする。これは日本社会の破壊につながる。その一方で反知性主義はトランプ現象より以前に実現している。意味のないナショナリズムを煽り、軍拡を目指す。日本の対米独立のための軍拡であるならばまだ一理はある。しかし安保法制を見ればわかる通りその内実はアメリカ軍の下請け軍隊になるだけだ。役に立たない高価な武器を買わされて、アメリカの軍需産業を利するだけだ。「日本の文化伝統を守る」と一見右翼のようなことを言うが、やっていることは、日本の文化伝統の破壊であり、日本社会の破壊である。アベは「右翼」でも「保守」でもない。レッテルを貼れば「奴隷的売国奴」「日本社会の破壊者」「アメリカのための独裁国家主義者」ということになる。本物の「右翼」「保守」こそアベを強烈に批判すべきである。

 もともとアベには、教養もなければ知性もない。哲学的思想的格闘の末に得た確固たる政治思想もない。権力を握るある種の人々にとっては使い勝手に良い「神輿」である。「神輿は軽くて馬鹿がいい」

 アベは幼稚園から大学まで吉祥寺にある成蹊学園で過ごしている。三菱財閥系のお坊ちゃんお嬢さん学校として知られている。上品でおとなしく、入試も難しい。アベは幼稚園からのエスカレターであるので受験の経験がない。受験したらどこも受からない。

その成蹊学園からアベ批判の声が上がり始めている。かつてアベを教えたことがある加藤節名誉教授は次のように言っている。「現政権の問題点は二つのムチと言える、すなわち『無知』と『無恥』である。」「政治学科で学んだはずの憲法の最高権威である故・芦部信喜氏を知らないと言って無知をさらけ出し、しかもそれを恥と感じない。」

またアベが出た法学部政治学科の在校生卒業生は次のような声明を出している。「私たち成蹊大学後輩一同は、あなたの安全保障関連法案における、学問を愚弄し、民主主義を否定する態度に怒りを覚え、また政治学を学んだとはにわかに信じがたい無知さに同窓生として恥ずかしさを禁じえません。」

 

 

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