時代を読み解くキーワード  「トランプ現象」

 

も数々の暴言をまき散らし、きわもの感が強かったドナルド・トランプが

アメリカ大統領選に勝利した。アメリカのマスメディアはクリントン有利の情報を垂れ流した挙句、大恥をかくこととなった。マスメディアはどちらの候補もたいしたことはないが、トランプだけはまずいという意識が働いて希望的観測を行ったとしか思えない。

クリントンと民主党の候補者争いを演じたサンダースの支持者は、すんなりクリントン支持に回らず、一部は諦め、一部はトランプ支持に走ったのではないか。

仮定の話であるが、トランプvsサンダースの争いになったら、サンダースが勝利したような気がしてならない。

 

世界にショックを与えている「トランプ現象」とは何なのか?

以下の二つの点について考えていきたい。

 

 @グローバリズム、新自由主義への疲弊と反動

 A暴言、排外主義、差別主義にみられる「反知性主義」もしくは「post-truth

 

@グローバリズム、新自由主義への疲弊と反動

 

 近年の資本主義はグローバリズム、新自由主義に突っ走っている。その結果製造業は安価な労働力を求めて後進国にシフトし、先進国の中間層の雇用が奪われ、没落していった。産業資本主義の段階は後進国へ移行し、それももはや行き着く先がないところまで行き着き、限界に近付きつつある。先進国は金融資本主義の段階へ移行し、カジノ経済に明け暮れている。資本主義の発展において、これはある意味必然である。資本主義はもはや終焉の時を迎えつつある。この結果として、アメリカを先頭に超格差社会広がっている。経済成長期の中間層が没落して、1%の富裕層と99%の貧困層に分断されてしまった。

こうした超格差社会に疲弊したアメリカ国民の「反ウオール街」「反ファンダメンタルズ(既得権益)」の意識がトランプ支持、サンダース支持に走ったのではないかと思われる。

 

それではグローバリズムとは何か?

グローバリズムとインターナショナルの違いは何か?

これについては小林よしのりが「民主主義という病」という本の中でうまくまとめているので、これを引用したい。

『グローバリズムとは世界を単一な市場にしようという新自由主義のイデオロギーである。国家の枠組みを超えて地球をフラットな経済市場にしようとする多国籍企業のためのイデオロギーである。したがってグローバリズムにとって国民国家は邪魔になるからむしろ消滅させようとする。

一方インターナショナルとは国と国との交際、つまり「国際化」という意味。

お互いの国柄を認めた上で交際しようとする感覚だから健康的である。』

 

 

国柄とは、各国、各地域の歴史、文化、伝統、宗教、言語、風俗、習慣、生活様式、独自の産業、商習慣などなどであろう。グローバリズムにとってこれらはすべて邪魔なものである。

 

もともとグローバリズムと新自由主義は80年代以降、アメリカとアメリカの多国籍企業が強引に推し進めてきた政策である。グローバルスタンダード、すなわちアメリカンスタンダードを他国に押し付けて自分たちのビジネスを有利に展開しようとしたのである。TPPもその一環であり、アメリカの多国籍企業が儲かる仕組みである。トランプが反TPPを掲げて支持されたのは、多国籍企業が儲かることがアメリカ国民を豊かにすることにはつながらないとアメリカ国民が気付いたためである。

アメリカが進めた政策が、皮肉なことにアメリカ国民を疲弊させてしまった。そのことに対する反動が今回現れたのではないか。反グローバリズムが健全なナショナリズム、保護主義に結びつくのであれば歓迎すべきことかもしれない。しかし、かのトランプである。

敵を移民、難民、異教徒、他国に絞り込み、わかりやすい排外主義、差別主義に向かっている。

 

アメリカの産業は今、金融、石油、農業、畜産、軍需で成り立っている。手間暇がかかり、ノウハウの蓄積が必要な製造業が戻ってくるとは思えない。アメリカ人には苦手な分野だ。従って中間層の雇用が簡単に戻ってくるとは思えない。金融という詐欺まがいの商売、自国に保有している資源発掘、遺伝子組み換え種子と除草剤で成り立つ大規模農業、成長ホルモンなど薬物漬けの畜産業、言い値で商売できる軍需産業、アメリカはこういう分野なら得意なのである。

 

そもそもトランプ自身、1%の富裕層である。排外主義、差別主義はグローバリズムと親和性か高い。反グローバリズムでトランプを支持した「没落した中間層」は裏切られることはないのか?他国がどんなとばっちりを食うのか?答えは遠くない将来に出るであろう。

 

 

 

A暴言、排外主義、差別主義にみられる「反知性主義」もしくは「post-truth

 

トランプの暴言、排外主義、差別主義から「反知性主義」という言葉が思いつく。

もしくはオックスフォード大学出版部が今年注目を集めた英単語の選出した「post-truth」ということになるか。「ポスト真実」すなわち「客観的な事実や真実が重視されない時代」という意味らしい。

 

これらの言葉からすぐに思いつく輩がいる。アベシンゾーである。

この無知で愚劣な政治屋の言動から「反知性主義」を指摘したらきりがないが、いやいやながらその一端を指摘せざるを得ない。

 

その1

「憲法が権力を縛るという考えは専制王政の時代の考えである。」

(感想)おいおいどこの教科書にそんなことが載っているのだ。誰がそんなでたらめを吹き込んだのだ。行政権力がしばしば暴走して国民が悲惨な目にあってきた苦い歴史への反省から、近代立憲主義が生まれてきたのではないか。

 

その2

「ぼくちゃん、ポツダム宣言読んでない。」

(感想)戦後レジームの原点であるポツダム宣言読んでいないとは、、、、唖然、茫然、、、

戦後レジームもわかっていないで、「戦後レジーム脱却」とは?感想を述べるのもいやになってしまう。

 

その3

「私は立法府の長である。」

(感想)「行政府の長」だろうが。三権分立の意味、わかってんのかねえ。小学校からやり直したら。

 

こんな体たらくが許されること自体信じられない。ひと昔前であったら「政治家失格」の烙印を押され政治の場から消えているはずだ。何と言ってもマスメディアが問題にしないことが悪い。最もマスメディアのお偉いさんがアベと飯を食ったといって喜んでいるのだから、世も末である。

 

「ポスト真実」すなわち「客観的な事実や真実が重視されない時代」

歴史的な事実や真実、人類が積み重ねてきた叡智を無視し、自分たちの思い込みと都合のいい解釈から噓やデマをでっちあげ、大衆の劣化した感情に訴えかけて扇動することは、独裁的権力者がさんざんやってきたことだ。トランプもアベシンゾーもこうした危うさを持ち合わせている。

 

ヒットラーは言った。「国民は小さな噓には騙されないが、大きな噓にはコロッと騙される。」

ナチスの宣伝大臣ゲッペルスは言った。「嘘も百回言えば真実になる。」

 

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